もう一つの超長距離シールド 本線トンネル北行002

セグメントを組み立てる
 2012年3月22日、マシン外径12・55mの泥土圧式シールド機が、品川区大井から約8㌔の道のりを掘進し、目黒区大橋にある大坂橋連壁の表面へ静かに到達した。
 最後となる4674リング目のセグメントを組んだ後、シールド機内部のジャッキを押し出す。すると2000tの機体はゆっくりと連壁に向けて進み始める。約600mm進んだところで、シールド機中央のセンタービットが、人からは見えない鋼製隔壁の外で新宿線建設時につくられた連続壁表面に触れる。
 同時にシールド機のコントロールルームでは、カッターを回転させるモーターのトルク値をグラフで確認しながら、慎重に掘進を進める。トルクグラフの数値が一瞬跳ね上がり、マシン先端部のビットが壁に触れたことが確認される。「掘進完了!」の声で、09年2月初旬から始まった掘進作業がようやく終わった。
 「切羽を持っているときは、数々の悩み、トラブル、リスクを負っている。地山という自然を相手に、何が起こるかわからないという不安を抱えながら、仕事を進めてきた」と森口敏美統合事務所長は胸の内を明かす。
 掘進時は、1mごとに約240t発生する大量の土砂の扱い、1枚約10tにもなる巨大なセグメントの搬入など、品質・安全面での苦労は絶えない。掘進が終われば、こうしたリスクからはとりあえず開放される。
 しかし、最終の完成物は道路空間を形作ることだ。これまでは掘進と床版づくりが主役だったが、これからは、内装や横連絡坑、五反田出入口など、道路としての機能づくりが始まる。
 「場所と工種と工程、時間軸という高度なパズルが4次元で展開される」と森口所長がいうように、これから2年間は協力会社の数も増え、新たな工事も生まれる。信頼しあえるチームで仕事を続けるには、協力会社の立場になって彼らの仕事に空きが生まれないように工程を組む必要もあるという。

・7人の「隊長」たち

掘進に使われたシールド機
 森口所長は自らを「大規模工事調整系」と呼ぶ。「私は統合所長という責務を負っているが、本線シールド工事の主役は7人の隊長たちだ」。現在作業所は、本線シールドの作業所と五反田出入口の作業所の2カ所に分かれている。本線には45人、五反田に37人の職員がおり、掘進、残土、床版、機電、横連絡坑・Uターン路、内装、設計の「7人の隊長」と五反田を統率する所長がいる。
 「彼ら隊長は、いわゆる課長だが、それぞれが所長の意識をもって活躍し、自分は彼らに声をかける立場」だ。8㌔のシールドと出入口の構築というのは大変大きな現場だ。中規模のダム現場ですら40人程度の職員で切り盛りするのが普通だが、この現場では80人を超える職員が立ち働く。
 この巨大作業所で大切なのは「情報をきちんと伝達すること」にあり、隊長である課長はJVの社員と、社員は協力会社の職長と、「同じ方向を見据えられるように情報伝達し、意識共有する」ことが重要だ。
 加えて「高度にライン化されたシールド工事では、遠い先まで見据えて考え、改善点が必要ならば一人で悩まずに早く決断して対応することが必要」だという。必要なら投資を惜しまず投入する。
 森口所長は、最終的な調整や折衝を受け持つという意味で、「大規模工事調整系」という言葉を使う。

→003へ続く

0 件のコメント:

コメントを投稿