ラベル 大井地区トンネル工事-大林JV の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 大井地区トンネル工事-大林JV の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

地上発進・到達シールド 大井地区トンネル工事001


地上から直接発進する大林組のシールド機
  「シールドマシンは立坑から発進する」。この常識を打ち破ったのが、中央環状品川線大井地区トンネル工事で活躍したURUPシールド機だ。地表面に置かれた直径13mを超える巨大なシールド機が、徐々に地中へと潜っていく。アニメや人形劇のなかの話だと思っていたことが、品川線の建設工事で実現された。地上から地中の立坑へ、そこからさらに地上に戻るという離れ業をやってのけた現場について、田代良守元URUP大井JV工事事務所長に話してもらった。

→002に続く

地上発進・到達シールド 大井地区トンネル工事002

発進を待つシールド機

田代元所長
 地上の大井ジャンクション(JCT)と地下の品川北立坑を結ぶ大井地区トンネル。現在ここには、鯨のような巨大なセグメントが地中から2本、大きな躯体を地上に見せている。今まで例のない地上発進、地上到達を実現した円形シールドだ。
 ここで採用されたのは「URUP(ウルトラ・ラピッド・アンダーパス)工法」と呼ばれる。従来ならば地上と地下のアプローチ部は、開削工法か、立坑を設置してシールドトンネルを併用する工法が採られるが、URUPでは直接地上から外径13・6mの円形シールドを発進させ、立坑でUターンして再び地上に直接到達させる。
 この工法ならば、工期が3分の1、CO2排出量も2分の1にまで低減できる。また掘削・処理する土量も、開削がダンプ8万8000台、シールド併用で6万2000台となるのに対し、URUP工法では実に5万5000台にまで減らせる。

・実績ない、成功させねば

 現場を統括した田代良守元URUP大井JV工事事務所長は、「この工法は、実際の公共工事で採用されたことがない。それだけに、まず成功させないと」と考えた。
 URUP工法は2004年、東京都清瀬市にある大林組技術研究所敷地内で全長100mのトンネルを実際に試験施工した経験がある。この時は矩形シールドで一辺3・5mほどの大きさだったが、今回は円形で直径が13mを超える。
 「実績のないものを、大断面で採用してくれた東京都には感謝している」と田代元所長は振り返る。この初めての取り組みには、海外を含む5000人以上の見学者が現場を訪ねた。

・発進時の浮き上がり対策

 2010年3月1日、シールド機は掘進開始。シールド機は巨大な船のようなもので、水圧のある地下では強大な浮き上がり力が発生する。自分の直径より高さのある土被りがあれば、それほど気にする必要はないが、地上から発進するときは課題になる。発進時はあらかじめ地表面に盛土し、上から荷重をかけて対抗した。田代元所長は「次回、発進するときがあれば、高重量コンクリなどで浮力対策して、盛土なしで発進することもできる」と話す。
 もう一つの課題は、地中ならば上からも押さえつけられるセグメントが、上部荷重がないことで側圧を受け、縦に変形することだった。そのため、掘進時にはトンネル断面中央に、水平の仮設鋼材をつっかい棒として変形を抑制した。

→003に続く

地上発進・到達シールド 大井地区トンネル工事003


掘進を終えて地上に姿を現したシールド機
 ・電力洞道との離隔400mm

 シールド機が発進し、立坑でUターンして再び地上に到達するまでの間に、進路を横断するように電力洞道が直交している。洞道は外径が2400mm、URUPシールド2本との離隔はそれぞれ400mmしかない。直径13m超のシールドから見ると、まるで紙のように薄い離隔をクリアしなければならない。
 シールドを通過させる時には、洞道の手前から切羽の土圧を厳密に管理し、リアルタイムの計測データをもとに情報化施工を実践した。その結果、洞道は水平・垂直方向ともに10mm以下の地盤変異に抑えることができた。

・1500tが立坑内で回転

 2010年11月8日、立坑に到達したシールド機は、再び地上へ掘進するために坑内で回転させ、ジャッキアップして発進させる。狭い立坑内で回転させるために、通常シールド機後方に連なる油圧ユニットや運転席などはコンパクトにして一体化した。
 PC鋼線をシールド機受台に、円周状に巻き付けてジャッキけん引、180度方向転換した後は、センターホールジャッキを使い、わずか1日で発進側の架台まで上昇させた。11年1月末に再び発進したシールド機は、5月20日、地上へと顔を出した。
 「最低1D」。Dとは、トンネルの直径のことで、土被りが最低でもトンネルの直径分ないと掘削は難しい、というのが土木界の定説だった。初めて地上に頂部を見せてから、3日間かけて到達したURUPシールド機は、まさに土木の定説を打ち破った。

・土木業界全体の技術へ

 「もともとシールドトンネルは、下水道から地下鉄、道路へと発展してきた。トンネルは必ず地上との接点が必要になる。今回URUP工法が成功したことは、今後の土木界にとって大きな一歩となるはずだ」と田代元所長は振り返る。さらに「URUPのような工法は、今回たまたまわれわれJVが手がけただけだ。土木業界全体がこうした技術を身につけて拡がっていくことを期待」している。


シールドトンネルの概要図
 工事概要 ▽工事場所=品川区八潮
▽発注者=東京都
▽施工者=大林・西武・京急建設共同企業体
▽工事内容=シールド機:泥土圧式マシン外径13.6m、シールド延長886m(大橋方向550m、大井方向336m)、換気所:ケーソン工法39×35m、掘削深度44m、擁壁・カルバート部:開削工法、擁壁長さ274m、カルバート長さ80m、橋梁部:2径間PC橋梁60m、橋脚3基

→本線大井行編に続く